蕪村の風景



二もとの梅に遅速を愛すかな
二もとの梅に遅速を愛すかな

木にも個性があって、のんびり型もあわて型もある
これが自然の営みなのだ。こんな個性に気づく人
もあまりいない。蕪村の暖かい観察眼があった。





隅ずみに残る寒さやうめの花
隅ずみに残る寒さやうめの花

丁度、まさに今がその時期。梅が主題か、「春寒」
が主題か。残る寒さに心地よい緊張があって、
花そのものにも緊張感が漲り、気高くさえ見える。
緊張の中に香りが流れる。 (2月5日記)




むめのかの立ちのぼりてや月の暈
むめのかの立ちのぼりてや月の暈

梅の香りだけでなく、この時期の月は早春の「気」
を纏っておぼろに輝いている。梅の香りを立体と
して掴まえた手練のわざ、画家としての眼力が
すばらしい。





一輪を五つにわけて梅ちりぬ
一輪を五つにわけて梅ちりぬ

花は風がなくても散る、まさに命尽きての最後の
風情、既に香りは無い。惜しんでも仕方のない
瞬間。梅も桜も花びらが散って命が終わる
五枚に分かれたところまで見届けた気持ちに
梅の花を惜しんだ心がうかがえる。





よき人を宿す小家や朧月
よき人を宿す小家や朧月

頼りなげな春の朧月、その頼りない僅かな月光を
受けて、小さな一軒家が見える、住人はどんな人
か、多分、小さな家にふさわしく小さな幸せがある
のだろう。母と一人っ子だった自分との「望郷」の
気持ちが底に見える。





古庭に鶯なきぬ日もすがら
古庭に鶯なきぬ日もすがら

古庭のイメージは、画室のあった所か。鶯の声
を聞きながら一日筆をとっている画人蕪村の
姿が彷彿とする。なんとも羨ましい光景を想像
してしまう。この様な心境から国宝の「十便十宜帳」 が生まれたのでは、と考えてしまう様な世間離れし た風景です。




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