蕪村の風景



たんぽゝのわすれ花あり路の霜
たんぽゝのわすれ花あり路の霜

かなり貧相で、花も小さいたんぽぽが霜
一面の白い路に咲いている。蕪村の黄
の色は菜の花にしても何故か印象深い
ものがある。江戸時代にたんぽぽの名
で呼ばれていた事に驚いた、もっとハイ
カラな後世の名前だと思っていた。





去年より又さびしいぞ秋の暮
去年より又さびしいぞ秋の暮

この時期、賀状の欠礼などが届いて、
普段気に留めてなかった人が鬼籍に
入った事を知って、蕪村と同じ気持ちに
させられる。一昨年より去年、去年より
今年、今年より来年と寂しさは増す。
句としてはあまり良くない水準だろう。




三日月も罠にかゝりて枯野哉
三日月も罠にかゝりて枯野哉

蕭々とした風景が目前に浮かぶ。
月の尖った顎が枯れ草に引かかった。
その趣向も面白いが、罠を仕掛けた
事によって月を人間の方に引き寄せた
ところが蕪村らしい。





畠にもならでかなしき枯野哉
畠にもならでかなしき枯野哉

同じ枯野でもこちらは、人間臭の強い
枯野になった。少しの土地でも耕して、
暮らしの足しにしたい農民のあきらめの
心境が悲しい。荒れた枯野に農民の汗
が沁み込む。





こがらしや何に世わたる家五軒
こがらしや何に世わたる家五軒

木枯らしによって、世間とは隔絶された小さな
家が五つ肩寄せ合っている。
この視覚は家だけでなく、その住民の生活
にまで及んで暮らしの方法まで心配している。
暖かい蕪村の心はいつも庶民に注がれている
蕪村の秀句の一つと見ている。





冬の梅きのふやちりぬ石の上
冬の梅きのふやちりぬ石の上

早咲きの梅は愛でる間もなく夜のうちに
散ってしまった。
二・三片の花びらを石の上に残して。
何か幼い子供か、若い女性でも亡くなった後の
感想のように思えて仕方がない。少し悲壮感が
漂った句で後味が残る。




戻る メニューへ 次へ