蕪村の風景



寒梅や梅の花とは見つれども
寒梅や梅の花とは見つれども

かじかんで開くにしても寒すぎる。ちらちらと
雪が降りかかる。雪の花なのか、梅の花なのか
寒さの中の幻影のようできーんと張り詰めた
空気が感じられる。





鶯の枝ふみはづすはつねかな
鶯の枝ふみはづすはつねかな

枝をふみはづす小鳥はいないと思うが、それは
後ろの「はつね」が受け止めている。季節も、
生き物もそして音もすべてが初歩で未熟で新し
いのだ。それに蕪村の特技、あそび心が動いた。




しら梅の枯木にもどる月夜かな
しら梅の枯木にもどる月夜かな

咲き始めた梅も、冴えた月光に吸収されてしまう
目に入るのは、裸木になった樹影だけ。
月と梅の花があれば絵になるが、ここで写したい
のは月光と、鋭く冴えた空気だった。





一羽来て寝る鳥は何梅の月
一羽来て寝る鳥は何梅の月

前句が変化した。時間的には少し遡るかも知れ
ない、一羽だけの孤独感、しかし花をつけた木と
おぼろな月がある幸福感、どんな鳥が来るのか。
ひょっとすると「蕪村」という鳥の願望なのかも。





こちの梅も隣のうめも咲にけり
こちの梅も隣のうめも咲にけり

期待の梅の季節が、ついに到来した。
単にそれだけの事、それだけの事が句になる
季節と、それだけの事を句にする力量がここ
に示された。
蕪村の満足げな顔が浮かぶ様である。
早春の駘蕩たる空気が流れる。





橋なくて日暮んとする春の水
橋なくて日暮んとする春の水

まだ気の許せない気温なのに、既に動き出した
蕪村のはやる気分が窺がえる。
薄暮の中にゆるやかな流れが伸びている
橋だけでなく点景となるものは何も描かれてい
ない。故に春なのだろう。




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