| <村の夕べ> 羊をつれた羊飼いが、 静かな小路を通ってはいって行く、 家々は眠たげで、 もうたそがれ、居ねむりしている。 私はこの村の中で、 いまただひとりの異国人だ。 悲しみ痛む私の胸は あこがれの杯を底まで飲みほす。 (後略)
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<はかない青春> 疲れた夏が頭を垂れて、 湖に映った自分の色あせた姿を見る。 私は疲れ、ほこりにまみれて歩く、 並木路の影の中を。 ポプラの間をおどおどした風が吹く。 私の後ろの空は赤い。 私の前には、夕べの不安と、 ーたそがれとー 死とが。 私は疲れ、ほこりにまみれて歩く。 私の後ろには、青春がためらいがちに立ちどまり、 美しい頭をかしげ、 これから先はもう私と一緒に行こうとしない。 |
| <野を越えて> 空を越えて、雲は行き、 野を越えて、風はよぎる。 野を越えてさすらうのは、 私の母の迷える子。 ちまたを越えて木の葉は飛び、 木立の上に鳥は鳴く・・・ 山のあなたのどこかに 私の遠いふるさとはあるに違いない。 |
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<私は愛する・・・> 私は、千年の昔、詩人たちに愛され 歌われた女性たちを愛する。 私は、うつろな城壁がそのかみの 王族の名残をいたむ町々を愛する。 私は、今日の人たちがもうだれも地上に いなくなった時よみがえる町々を愛する。 私は愛する・・・しなやかな、こよない、 生まれずに年どしのふところに憩う女性たちを。 彼女たちはいつか星のように あお白い美しさで 私の夢の美しさに似るだろう。 |
| <ラヴェンナ> 私もラヴェンナに行ったことがある。 ささやかな死んだ町で、 書物にもよく 記されている かずかずの教会とたくさんの廃墟がある。 町うぃ通りぬけて、振り返って見ると、 街路はいたく陰気で湿っている。 千年のよわいを重ねて、ひっそりと語らず、 至るところ苔むし、草がはえている。 さながら古い歌のようだ・・・ (後略)
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<流浪者の宿> 夜ごと夜ごと絶えず カエデの影に冷たく見まもられながら、 かすかな泉水が流れつづけるのは、 なんと見慣れぬ不思議なものだろう、 そして月の光が破風の上に 絶えず、においのように漂い、 雲の軽い群れが冷たい暗い空中を飛ぶのは、 なんと見慣れぬ不思議なものだろう。 そういうものは皆いつも変わらないが、 私たちは一夜やすめば 先へ先へと国中を歩いて行く。 私たちをしのんでくれるものはひとりもいない。 (後略)
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| <けれども> けれども私は青春の刻々を 残りなく味わった。私は嘆くべきだろうか、 私のいたわられた胸が、傷と にがさと悲しみとのみを抱いたことを? 青春がもう一度もどって来て、 ありし日のうるわしいおもかげをそなえていたら・・・ あの青春が違った終わり方をしたら、 私は満足するだろうか。 |
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<彼はやみの中を歩いた> 彼は、黒い木立ちのかさなる影が 彼の夢を冷やす闇の中を好んで歩いた。 だが、彼の胸の中には、光へ、光へと こがれる願いが捕らえられて悩んでいた。 彼の頭上に、清い銀の星のこぼれる 晴れた空のあることを、彼は忘れていた。 |
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