| <九月の哀歌> おごそかに、陰気な木立の中で、 雨は歌をかなでている。 森におおわれた山々ではもう 身ぶるい させる茶色がきざしている。 友よ、秋は近い。秋は、もう 森のふちで待ち伏せながら、 ながし目を送っている。 野もうつろに見つめている、 訪れるものは鳥だけだ。 (後略) |
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<エリザベート> わたしは、もう満ち足りた気持ちには、なれない。 私は、来る日も来る日も、 あなたの姿をあこがれの中に抱くばかりだ。 私はほんとにあなたのものだ。 あなたの まなざしは私の心の中に 予感にあふれる光をともした。 その光は絶え間なく告げる、 私はあなた自身のものだ。 だが、清らなあなたは 私の情熱に気づかず、 私にかまわず、楽しげに花咲き、 高々と星のようにさすらう。 |
| <愛の歌> 私はあなたの絹の靴を歌う、 あなたの着物のきぬずれを歌う、 私は夜ごとあなたを夢に見る、おお、 私の悪い人、私の心の悩みよ! 私はあなたの名まえしか知らない。 私はもう、どんな苦しみのためにも 楽しみのためにも泣くことができない。 あなたのために泣くだけだ、私の心よ。 私はもうどんな幸福も 難儀も知ろうと思わない、 あなたのためにあこがれ燃えるよりほかには、 おお、あなたはなぜ死んだのです? |
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<さすらいの途上> 悲しむな、やがて夜になる。 そしたら、あお白い野山の上に 冷たい月がひそかに笑うの見、 手を取り合って休もう。 悲しむな、やがて時が来る。 そしたら、休もう。私たちの小さい十字架が 白っぽい道のべに二つ並んで立つだろう。 そして雨が降り、雪が降り、 風が去来するだろう。 |
| <運命> 私たちは、子どもたちのするように、 怒って、わきまえもなく別れ、 愚かなはにかみにとらえられて 互いに避け合った。 悔いて待つうちに 幾年も過ぎた 私たちの青春の園に 通ずる道はもうない。 |
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<眠れぬ夜> 意識の最後の境に、精神が 疲れながら意地悪く目ざめて見張っている。 瞬間のうちに無数の生を 幻のように生き、熱に疲れながら いつまでも休もうとしない。 夢みる血管の働きの中から、暗く 生への。死へのあこがれが燃え上がる。 精神はにがい微笑をもって、老人のように、 そのあこがれを嘲る。 (中略) |
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見よ、色はなやかに、 疲れた魂の奥から、なつかしく 昼間のさまざまの形が上がってくる。 記憶は、光と実在の形に満ちて 幸福げに耽溺する。 (中略) |
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おお記憶よ、唯一の女神よ! 慰めるものよ、ようこそ! 静かに、耳すましつつ、魅せられたもののように、 私はかって生きた時のの長い列が 砕かれもせず永遠の日の中を通るのを見る。 その一つ一つが完全に、時間を超越して。 その間に夜はひそかに窓ににおい、 甘い眠りは、ひそかに待ちながら、 近づく陸地から、私にもう 救いの網を投げる。 |
| アジアの旅から <夜、沖合いで> 夜、海が私をゆすり、 色あせた星の輝きが、 広い波の上にうつる時、 私は自分をすっかり、 一切の行いと愛とから引き離し、 じっとたたずんで、ただひとり ひとりぼっち海にゆられて僅かに呼吸する。 海は静かに冷たく無数の光を浮かべて横たわっている。 |
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| すると、私は友だちたちをしのび、 まなざしを友のまなざしの中に沈めずにはいられない。 そしてひとりひとりにそっとたずねる。 「君はまだぼくのものか。 ぼくの悩みは君にとっても悩みか、 ぼくの死は君にとっても死か。 君はぼくの愛と苦しみについて、 一つの息吹き、一つのこだまでも感じるか」 すると海はゆうゆうと見ながら、語らず、 否、とほほえむ。 どこからもあいさつも答えもやってこない。 |
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