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<うたげからの帰り> またしても、うたげははかなく果て、 私は胸苦しくもだえつつよろよろと、 凍てついた野を歩き、 家に帰りつけないかとさえ思う。 おお、苦痛の陶酔よ、 歓楽の杯の砕ける時、 私は、半ぱな喜びに耐えるより、 おまえを心の中に抱いていたい。 苦痛であるにせよ、うたげであるにせよ、 哀れな魂は、ただもう 最悪のものと最上のものだけを抱いていたい。 この魂は熱情のゆえにこそ燃えるのだから。 |
| <愛人への道> 朝はさわやかな目を開き、 世界は露に酔って輝いている。 金色に世界を包んでいる 若々しい光に向かって。 森の中を私は行きつつ、 足ばやな朝と、まめに 歩調を合わせる。 朝は兄弟として私を迎えてくれる。 真昼は、暑く重く 黄色い麦畑で、 私がせっせと通りすぎ、 奥の方にやって行くのを見る。 静かな晩になったら、 私は目ざすところに着き、 昼のように、燃え尽きよう、 おまえの胸で。いとしい者よ。 |
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<少年の五月の歌> おとめらは 美しい花ぞのの中で遊ぶことができる。 金色の柵がまわりにある。 男の子らは うらやましそうに柵のふちに立ってぬすみ見し、 あの中にはいれたら、と考える。 この美しい花ぞのの中は 清く明るい光にあふれ、 そこにいる人はみな心たのしげだ。 ぼくたち、男の子らは待たなければならない。 大きくなり、若い紳士になるまで、 中にはいることはできない。 |
| <交響曲> 砕ける暗い激浪から沸き立つ 生命の多彩などよめき。 そのかなたには、いつも変わらず、 星辰の高い丸天井の家。 私の命は沈みはて、 私は世界のはてに漂い、 深く酔うて、火花吹くそよ風の 甘い火を呼吸する。 それからのがれるやいなや、 生命の不思議の火が 無数の歓喜をもって、私を 新たに大きい潮の中に洗い去る。 |
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<幼い日> おまえは私の遥かな谷間、 魔法にかけられて、沈んでしまった谷間。 いくどとなくおまえは、私が苦しみ悩んでいる時、 おまえの影の国から私に呼びかけてくれ、 おまえのおとぎ話の目を開いた。 すると、私はしばし幻想にうっとりとして、 おまえのもとにもどって、すっかり我を忘れるのだった。 おお、暗い門よ、 おお、暗い死の時よ、 私のそばに来るがよい。 私がよみがえって、 この生の空虚の中から 私の夢のふところに帰るように。 |
| <せつない日々> なんという日々のせつなさ! どんな火によっても私はあたたまらない、 太陽も私にはもうほほえまない。 何もかもがうつろで、 何もかもが冷たく、つれない。 やさしく澄んだ星さえも 慰めるすべもなく私を見つめている。 恋もまた死ぬということを、 しみじみと知った日から。 |
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<チョウチョウ> 私は野を歩きまわった。 すると、私は一羽のチョウが 青い風に吹かれているのを見た。 チョウはきわだって白く、また濃い赤のまだらだった。 おお、チョウよ!世界がまだ 朝のように澄んでいた子供のころ、 まだ天があんなに近く感ぜられたころ、 おまえが美しい羽を ひろげるのを見たのが最後だった。 中略 白と赤のチョウは 野の方へ吹かれて行った。 夢み心地で先へ歩いて行くと、 天国からでも来たような 静かな輝きがあとに残った。 |
| <あなたを失って> 私のまくらは夜、私を 墓石のようにうつろに見る。 ひとりでいること、 あなたの髪をまくらにできぬことが、 こんなにもつらいものとは思わなかった。 私は家の中にただひとり、 つりランプを消して伏し、 あなたの手をつかもうと、 そっと両手をのばす。 そしてあつい口を静かに あなたの方に押しつけ、思うさまキスする 突然、私は目をさます。 すると、まわりはしじまな冷たい夜、 窓に星がきらきらと光っている おお、あなたの金髪はどこに? あなたの甘い口はどこに? いまは私はどんな喜びの中にも、悲しみを、 どんなブドウ酒の中にも、毒を飲む。 ひとりでいること、 ひとりで、あなたなくていることが、 こんなにつらいものとは、ついぞ知らなかった |
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<最初の花> 小川のそばで、 赤いつぼみの柳にならって このごろ 黄色い花がたくさん 金色の目を開いた。 とくに純真さを失った私の 胸の奥で、一生のかぐわしいうら若い日の 思い出がよみがえって 花の目の中から私を明るく見つめる。 私は花をつみに行こうと思ったが、 今はすべての花を咲くにまかせて、 家に帰って行く、老いた人として。 |
| <うたげの後> 食卓からブドウ酒がしたたり、 ロウソクはみなひときわ悲しげにゆらぐ。 私はまたひとりぼっちだ。 また、うたげは終わった。 静かになったへやべやの あかりを、私は悲しく一つ一つ消して行く。 庭の中の風だけが憂わしげに 黒い木立と語っている。 ああ、疲れた目を閉じるという この慰めがなかったら! いつかまた目ざめようという 願いを、私はもう感じない。 |
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