山頭火(さんとうか)



まったく雲がない笠をぬぎ

珍しく晴れ晴れとした気持ちの句である。
しかしまっすぐな道にさえさみしさを感じる山頭火のこと、
晴れていればいるほど、
その大きな空間に寂寥感が充ちている。





月夜    あるだけの米をとぐ

米や食べるものがなくなれば乞食の行に出る。
米のありがたさは特別のものだったろう、
わずかな米、白い飯、
山頭火にはいくつもの切実な句が残されている。
僅かな米と対照的に月をもってきた処が私は好きだ。
すべてに感謝するの心が溢れている。




酔うてこほろぎと寝ていたよ

九州で焼酎に酔ったときの句。
酒は時によって本人が、思いもよらないまわり方をする。
これは私も経験済み。
本人は極楽の気分、
しかし翌日の痛烈な二日酔いの最中に思い出す。
ここでこの様な句が生まれるのが山頭火の真骨頂。





鴉とんでゆく水をわたろう

秋の夕暮れ、行き暮れて方向さえ定まらぬ心境か。
それとも雲の行くまま、 水の流れるままに
身をあずけた行乞の精神か。
風景として見るとまさに秋の枯淡の一幅になる。





笠も漏りだしたか

衣のすそも切れ、色は褪せてもただひたすらの行乞。
山頭火の気持ちはそんな自分の姿が問題なのではない。
漏りだしたのは笠だけではない。
何か自分の中でも綻びがあって
「笠も」となったのではないだろうか。





雨ふるふるさとははだしであるく

山頭火にとって「ふるさと」は
常人の持つ「ふるさと」ではなかった、
故郷に錦とは正反対の気持ちでの「ふるさと」だった。
いずれにしても「ふるさと」とは、
ただひたすら懐かしく、親しい場所なのだ
その気持ちを雨の中で確かめるべくはだしで歩き続ける。




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