山頭火(さんとうか)



月夜あかるい舟がありその中で寝る

四国遍路の時の句らしいが、かなり暢気な気分が
出ている、月に先導されて寝る場所も決まった。
苦行の続く乞食行だが、今夜ばかりは波上の月
と共にどんな夢をみるか。





泊めてくれない折からの月が行手に

一夜の宿を請うても、人の心は簡単には開かない
情けない気持ちを癒すように、月が行く手で招いて
くれる。この上は自然の光の中で歩み続けるだけ。




くりやまで月かげの一人

夜半。草庵の厨まで入りこんで照らす月。厨では
自分一人、静かで透明、存在するのは月光のみ
こんな情景は他の季節には望めない。
この光の中に身を置く事の嬉しさ、生きていて良
かったと思うひと時だった。





月が昇って何を待つでもなく

昇った月はどんな形だったろう。形や季節などは
お構いなく、ただ月が出たと云っただけで他に何
が必要か、なにを付け加えるか、待つものも必要
ないではないか。と私は思う





どかりと山の月おちた

なにか大きなため息が聞こえそうである。
自然の有為転変に、自分を重ね、また自分の方向
をもまさぐる山頭火である。どかりと落ちる月をみて
彼はどんな心理状態だったか。「どかり」の一語が
重さをもっている、月の 末期に自分の姿は如何に
映ったか。





月へひとりの戸はあけとく

月との一体感がでている。いや自然と一体なんだ。
この後、月は 厨の方に進むのだろう。
戯画に月を擬人化したものが、沢山あるのは周知の
こと、一人住まいの侘び生活、月の光が訪れる。
俗を離れた身にだけ訪れる感覚の開放だろう。




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