タゴールの詩によせて

雨の午後




雨の午後
私は、とある雨の日のことを覚えている。黒雲が倦みつかれて一時雨を注ぐのを止めると、烈風がやってきて彼らを狂えるように鞭うった。
私は夕闇の中に座っていた。
心がどうしてもはたらこうとしない。物うく私は私の楽器をとりあげた。調べは雨と雨の音楽の響きをもっていた。
彼女が自分の部屋から出てきて半開きの戸口に
立った。
それから引き返して行ったが、しばらくするとまた戻ってきて、私のそばに坐った。
雨の午後
雨の午後
そうしてうつむいたまま忙しげに針を動かしていたが、まもなく仕事を止めると、白い雲を背景にぼんやりと浮き出ている窓辺の樹々を見つめた。
雨は止んだ。私の歌も止んだ。彼女は髪を梳るために立ち去った。
ただそれだけのことである。
歌と風と雨でみたされた悲しい午後。
歴史は王子と戦争について語っている、ありふれた故ににかくも安っぽいさまざまの物語を。
しかし、雨の午後のこの単純な物語は、地底の宝玉のように時の深みに隠れて残った。
二人の人間だけがそれを知っている。
雨の午後



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