タゴールの詩によせて

「タゴール・続編2」



限りなき美の
光に浴した清らかな朝、
無限なもの、形なきものが
さまざまな形の試金石で
歓ばしい形をつくりだす、
ひごと
恒に変わらぬ古い祭壇で
恒にかわらぬ新しい浄めの儀式がおこなわれる。
緑の大地と碧い空をつなぎ合わせ
地球の衣が
光と影をないまぜてあまれてゆく。
天空の心臓の鼓動が木の葉木の葉に鼓動する。
(後略)



大空の端に触れて
漁舟が帆をはって漕ぎ出すと、
白いはぐれ雲が そらの一隅に浮かんでいる。
光にしぶきをあげる水甕を 腰にかかえた村の乙女らが
ヴェール越にひそひそ話しをしながら行くと
マンゴーの森蔭の虫の音すだく曲がりくねった小径で
どこからか郭公が ときどき寂しい小枝で鳴いている、
田舎暮らしのおずおず羞じらう物陰で
神秘のヴェールが わたしの心に震えている。
池のあちこちの岸で芥子畠がいっせいに芽吹き
にっこうの贈り物への大地の返礼に
太陽神の寺院に はなばなの献げものが供えられている。
(前略−後略)
森閑とした朝のひととき
孤独な部屋の開け放たれた窓辺に坐る。
外では 緑の調べにのせて
大地の生命が歌となってたちのぼる〜
不滅の泉の流れにのって
はるか彼方の碧い光へと心はただよう。
誰にむけて わたしは この讃歌を送るるのだろうか〜
この心の切なるあこがれを。
あこがれは いっさいの価値を超えたものに ふたたび価値を与えようと
美の音信を捜し求めるが、
黙して語らない。
それは ただひとこと言う{私は幸福だ、」とやがて韻律が止むと
しみじみとつぶやく「わたしは祝福されている、」と。



遥か彼方の天空の 淡いやわらかな碧さよ。
森が空の下で高く腕をのばして
自らの緑の献げ物を 黙ってささげている。
マグ月の若々しい太陽が地上の
いたるところに 透明な光のスカーフをひろげる。
このことを わたしは書き記したが
心ない画家が とっくにそれを消し去っていた。
世界の片隅の窓辺に坐り
地平の碧さに無限なるものの言葉を見る。
影にいだかれて 光がとどく シリシュの樹から 緑のやさしい友情が運ばれてくる。
心に声がする〜
遠くはない、それほど遠くはない、と。
道の行く手が陽の沈む山の頂にきえてゆく、
黄昏の宿の戸口で 私は黙って経っている、
遠くの方でときどき光がきらめく〜
最後の巡礼の尖塔で。
入口では 一日の終わりのラギニがなっている、
その響きが 生命の全ての美に混ざる。
人生の長い旅路で触れたものは すべて
完成への招きであった。
心に声がするー遠くはない、それほどとおくはない、と。



たちまちにして過ぎ去った
この徒歩旅行の風景が
意識の遠い境で、
今日 心にうかぶ。
なにもかも忘れ去られていた風景が
人生の最後の別れのときに
遠くの鐘のねとともに 心によみがえる。
名声と汚名をくぐりぬけて 人生の黄昏にたどりつき、
いまわたしは わかれの河岸に坐っている。
私は自分の肉体を信じて疑うことはなかった、
いま年古り 肉体は自らを嘲笑い、
そのために全てが狂いをきたしているのはわかっているが、
私の支配力は衰えている。
そうした屈辱から わたしをを守ってくれる物たちが
片時も見放すことなく
いま日暮の最後の準備に忙しいわたしの傍らに立っている。
名こそ告げぬが、彼らはわたしの心に住んでいる。
(後略)





この自我の殻を やすやすと脱がせてください〜
意識の耀く光に濃霧をつきやぶって
真理の永遠のすがたを顕示させてください。
人みなのただなかにあって
永遠なる一者の歓喜の光明をわたしの心にともしてください。
この世の騒乱を越えた静かな天国で
永遠の平和のかたちを見させて下さい。



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