しかし、玉藻の前の怨念はこの石の中に留まった
「それにしても貴女は細部までよくご存知ですが、どんなお方ですか?」
「私は以前は玉藻の前、今は那須野の殺生石、その 石魂です。」
「成仏の気持ちがあってこの様に現れ言葉を交わすのか。 ならば引導成仏して進ぜよう。」
「木石に心はなしといえども、草木国土悉皆成仏と聞く 時は、もとより仏体備わるものなり。」
と花を手向け香を焚き、石にむかって仏事を行う。
石は二つに割れた。
「不思議だ。光の中でよく見れば狐の形がありながら、ほんとに恐ろしい人間の形だ」
「有り難きことかな。今、有り難き御法を頂きこの後は 悪事を致すことあるべからず」と固く誓い終わると 亡者の姿は消えていた。
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