二人の旅僧がやって来た。
京都から鳥羽離宮をでて大山崎に、高槻の芥川を越え、有馬から摂津・昆陽の池を経て、ここ須磨の浦にやってきた。
歌にも読まれた寂しい景色、塩焼きの煙が浜の松にたなびき、千鳥のこえ、遠くに小舟が漂うている。
桜の若木が、今を盛りと咲いている。一人の男に出会った。
「日暮れが近くなってきました、一夜の宿をお願い出来ませんでしょうか。」
「おかしい事を仰いますが、この花の蔭ほどのお宿はございませんでしょうが」
「なるほど、花の宿には違いませんが、はたしてこの宿の主人は?」
「行き暮れて木の下蔭を宿とせば 花や今宵のあるじならまし」と詠まれたのは、この苔のしたに居られる方です。薩摩の守忠度と言われたお方の縁故のかた達が、このしるしの桜を植えられました。」
「そうでしたか、これは不思議なご縁です、かっってはお互いに、藤原
俊成の和歌の同門だった。」
この不思議な男は、手向けの読経を聞き、花の蔭から桜に宿るように
して消えてしまった。 |